会(あ)うは別(わか)れ

藤原定家の歌で「はじめより、あふはわかれと聞きながら、暁知らで、人を恋ひける」というのがある。古来より、現代の歌謡曲に至るまで、この情念をうたったものは数多くあります。「会うは別れのはじめとは、知らぬ私じゃないけれど」という切ない思いは、すっかり日本人のものになっていますね。この「会うは別れのはぞめ」というのは、「白氏文集」の「合者離之始」を口語訳したものですが、「法華経」の「愛別離苦、是故会者定離」や「仏遺教経」の「会う者は必ず離るることあり、憂脳(うのう)を抱くことなかれ」などという、仏教思想をやさしく表現したものです。「生者必滅、会者定離」といわれるように、生じたものは必ず滅し、会ったものは定めて離れなければならないという、人生の無常を表しています。3月4月は、卒業、入学、入社、転勤など、人の往来の多いシーズンです。人生のはかなさを悲観的にながめるのではなく、だからこそ、出会いを、人間関係を大切にしていきたいものです。