仏教語から転じた言葉:「行脚(あんぎゃ)

「月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也」は元禄2年(1689)に奥羽北陸を行脚した、松尾芭蕉の紀行文、「奥の細道」の有名な冒頭の文です。行脚とは、僧が一定の住所をもたず、師や友を求め、自分の修養や教化のために、処々を遍歴することで、仏道修行のための旅のことをいいます。お釈迦様は弟子たちに「これからは世の人々の利益と幸福を実現するために、国内をくまなく遍歴せよ」と教えました。寺院仏教が発展してからは定住化しましたが、中国では禅宗が興隆して、諸国行脚が盛んになったいいます。行脚僧は行く雲や流れる水のように、足にまかせて諸国を遍歴するので、雲水ともいいます。俳人たちの諸国旅行もまた、行脚といいます。今では、行楽地は車でいっぱいですが、これを機会に一度、徒歩で旅をしてみませんか。