内観体験記 VOL:08

入所3日目である。さすが3日目ともなると一日のパターンと云うか、要領が分かってきた。朝の4時半起床は、元来早起きの習性のある私には当初から気にならなかったし、根は真面目一方であるから??、規律ある生活もさほど苦にならない。しかし内観に対しての集中力が一向湧いてこない。入所時のアドバイザーの方が「1,2日は誰でも集中出来ないですよ」と仰られたが、今日で3日目になるから、そろそろ内観境地なるものに少しでも近づきたいが無理かな。
 今日も4時前に目が覚める。いつもの如く洗顔を済ませ、境内を深呼吸しながら散策する。今日初めて気がついたが、境内には梅の木が方々に植えられている。10数本はありそうだ。例のごとくお手伝いさんが朝仕事に精を出していられる。「おはようございます。早くからご精が出ますネ。所で、境内には梅の木が多いですね?」と尋ねてみた。「水野先生が来られた時、梅干しが有れば食べるに困らないと思われ定植されたそうです」との説明を頂いた。他にも荒れ地を自ら500坪ほど開墾され、現在も野菜などを栽培して米以外はほとんど自給自足で事足りているとの事である。それで食事の「一汁一菜」ならぬ「一梅一采」が理解できた。こんなこと云ったら誠に不謹慎だが、ここでの食事のコストは単純に見積もっても2食で100円前後だろう。当所に従事されている、水野先生を含め10人の方々も当然同じ食事である。それにしても、皆さんの血色の良さとはつらつとした動きは健康そのものだ。食事の楽しみもある程度は当然だが、如何に日頃贅沢三昧をしているか知らされ愕然とした。余談だが、ここでの7泊8日の費用は定められていない。事前の案内書には「浄財」とだけ記してあった。私は紹介の知人が1万円と聞いていたから、その金額を入所時、仏前にお供えした。ある食事のときにそれが話題になり、ほとんどの人が5000円前後だった。聞く所によると、浮浪者当然の方々が2,3カ月滞在してそのままお帰りになるケースも度々あるそうだ。それでも、2,3年すると多くの方が訪れ「あの時から人生観が変わり、今では職も得、家族と共に元気で暮らしている」と多額の浄財を置いていかれるそうである。3日目の段階ではそうは思わなかったが、終了してからはうなずける話だった。
 本堂に上がり合掌、読経、礼拝を済ませ食堂へ行き、すぐ内観所に入る。午後9時までの長い内観が始まる。今日は1時から、楽しみの水野先生の講話のある日でもある。